-カチュア=ゼイラム-
カチュアは肩にさげた荷を下ろし、手近な岩塊に腰掛けた。 今回のM.S.B.Sランキングバトルでもなかなかいい成績で、賞金もそれなりに入った。 加えて、先日捕まえた賞金首の報奨金も入ったし、これでしばらくはまともな生活が出来る。 カチュアは、ほとんど誰にも見せたことのない笑みを浮かべる。だが、その笑みもどこか背筋が薄ら寒くなるような笑みだ。 まるで死神の翼を彷彿とさせる背中のEVILバインダー。昨今のスペシネフにとっては、それは単にバランサー兼機動ユニットとしての役割しか持たない。が、彼女の不幸はそのEVILバインダーが本来の性能を持って生まれてしまったことにある。 周囲の人間に不快感を与えるノイズ・シーケンス。それは、EVILバインダーをリバース・コンバートしていない時にでもうっすらと発し、無意識的に周囲の人間は彼女を避けるようになった。 結局、両親の愛にも恵まれず、幼くして彼女は孤児になり、世話になった孤児院でも皆ことごとく彼女を避けた。 そうして、孤児院を飛び出し、家を持たない生活をするようになってもう随分と立つ。 不幸中の幸いと言うべきか、EVILバインダーが発するノイズ・シーケンスは本来の意味でも役に立ち、カチュアはM.S.B.Sでもトップクラスの戦歴を持ち、また賞金稼ぎとしても相当の腕を持っていた。 が、彼女の名は世間的にはほとんど知られていない。半分は彼女自身があえてそうしているのだが、もう半分はやはりEVILバインダーの影響だった。 生まれてこのかた、ずっとこうだったために彼女は世間や特定のVRを相手に怒りや憤りを持つことなく、ただただ退廃的に日々を過ごす。 今も、新しい賞金首とM.S.B.Sの高額賞金の情報を求めて、新しい町へ移動している。 それも徒歩で、800キロの道のりを。時間はかかるが、ランドシップやエア・バスを利用するよりもこのほうが安くつく。 そしてなにより、彼女には旅路を急ぐ理由などは何もなかった。 「・・・・・・?」 そんな彼女が、「彼」の気配をいち早く察知したのは、EVILバインダーのなせる技か。 だが、そのノイズが「彼」を呼び寄せた事にもなるなら、皮肉な事ではある。 「彼」は、カチュアの正面に降り立つと、ものも言わず銃剣スライプナーを構える。 カチュアは、その彼が発するシャドウ・シーケンスを敏感に感じ取り、似た者の出現に狂喜した。 「そう・・・・・・?あなた、私と戦いたいの・・・?私と?」 M.S.B.Sでも好んで彼女と戦おうとする者などいない。だから、彼女はそれが得体の知れない「シャドウ」であっても、自分を気にかけてくれる者の出現に、狂喜するのだ。 「彼」は、彼女のそんな気をしってか知らずか、にっと口元を歪めた・・・。 |
◇ 問題 ◇ バーチャファイターのアキラ、ストリートファイター3のユン、鉄拳4のポールなどが使える 中国拳法の技をローマ字読みで下記アドレスの○の部分に打ち込むこと。 http://www116.sakura.ne.jp/~jr/eventvrcwarg○○○○.html |