- スィン・ラナウェイ -

ホライゾン・ヒルにやって来たのは8ヶ月ほど前。
冷静沈着で無愛想。どこか周囲のハンター達を見下しているような節があるが、何故か自虐的な発言も多い。

その槍術はまごう事なき正統派で、誰が見てもただの流れ者ではないが、当然ながら問いただす者はいない。
狩りに行く際、自分からチームを募る事はまず無く、乞われてチームに入る事がほとんど。


武器はロングスピア。随所に瀟洒な細工の施されたいかにも値の張りそうな銀製の槍。



- スィン・ラナウェイ -
スィンは、物憂げに窓から覗く月を眺めていた。
窓際のテーブルに1人でつき、目の前には酒瓶一つ置かれていない。
すでに深夜とは言え、キャノンボールで酒を酌み交わすハンター達はまだまだ多い。その中で、スィンの存在は少々異質に感じられる。
が、そんな彼女に声をかけるハンターはいない。皆、一度は彼女に声をかけ、その結果彼女が本当にそうやって他人に声をかけられるのを疎ましく思っていると知っていたからだ。

だから、彼女に声をかけるとなれば、それは確とした目的があるということに他ならない。

「スィン・・・ちょっといいか?」

そう言って、スィンに声をかける男がある。年の頃は30代半ば、といったところか。
彼は、パレドリィという名で呼ばれているハンターで、キャリアはそこそこ。腕もそこそこという典型的な中堅ハンターである。

「・・・なにかしら?」

スィンはすっと視線をパレドリィに移す。その表情は、退廃的もしくは何もかもを諦観したような雰囲気を感じさせる。

「いや・・・その、実は明日ラスヴィエタに狩りに出る予定なんだが、予定していた一人がちょっと駄目になってな・・・」

その視線に気おされてか、言葉をつっかえさせながらパレドリィは言う。

「・・・それで?」
「だから、その代わりをスィンにやってもらえないかと思ってな・・・。もちろん、報酬は弾む。あんたは、頼りになるから」

スィンは、パレドリィの台詞を聞くと露骨に苦渋の表情を浮かべ、目を伏せる。そして、しばらくの間。

「・・・わかったわ。同道させていただきましょう」

スィンは、いつもこうである。
自分から率先して狩りを行う事はないが、乞われれば必ず逡巡するような表情を見せ、その後に受け入れる。
それがどういう意味をもっているのかは、誰も知らない。


「はっ!」

スィンがロングスピアを薙ぎ払い、パルトスの首を切り裂く。ぐらりとパルトスの体が揺らぎ、次の瞬間にスィンの二撃目がパルトスを切り倒していた。
その隣ではパレドリィともう一人のハンター(名をロビンといった)が一匹のパルトスと向き合っており、スィンはすかさずそちらのパルトスも斬り倒す。

「す、すまない・・・スィン」
「助かったぜ・・・」
「・・・これぐらい、大したことじゃないわ」

スィンは槍と鎧に付いた血糊を拭うと、パレドリィの顔も見ずに言う。

「よし・・・じゃあとっととバラしてしまおう。こいつは俺とロビンに任せてくれ。・・・こんな事ぐらいしか出来ないで、申し訳ないが」
「・・・気にしなくて良いわ」

スィンの態度はあくまでもそっけない。
が、それはどこか無理矢理感情を抑えているように見えた。


その後、さらに一匹のパルトスを仕留めた後、パレドリィとロビンが選んだ水場に露営のためのテントを張る。
森の中ではあるが、空を臨める場所だ。
テントを張ると、パレドリィとロビンは真っ先に仕留めたパルトスの解体にかかる。
パレドリィもロビンもハンターとしての技量はさほどでもないが、解体作業に関しては実に鮮やかな手並みを見せた。

「今日は本当に助かった。この分だと、期日を二日にしても良さそうなぐらいだよな」
「たしかにな。これだけでも十分すぎるくらいだからなぁ」

スィンはそんなパレドリィとロビンの台詞に苦笑する。二人とも、自分よりもかなり年上のはずだ。そんな二人が、素直に自分を頼ってくれる事が、嬉しくもありまた歯がゆくもある。

やがて日も沈み、パレドリィとロビンも解体を終え、簡素な食事を済ませて三人は眠りについた。
そこかしこでかすかに動植物が発する音以外は、実に静かな夜だった。

その夜。草木でさえ眠っているような真夜中に、スィンはふっと何者かの気配を感じて目を覚ました。
人・・・ではない。獣特有の気配。それも、複数。
スィンは外に気取られぬよう素早く鎧を身につけると、テントから抜け出し、隣のテントに小走りで駆け寄っていく。

「パレドリィ、ロビン。起きなさい。早く」

まだ、周囲に姿こそ見えないが、なんらかの獣、それもおそらくは相当の数の群れが潜んでいる事は間違いなかった。
スィンは、可能な限り声音を落としてパレドリィとロビンに呼びかける。
一瞬の間をおいてテントから顔を覗かせるパレドリィ。ロビンはまだ半分夢の中にいるようだった。

「・・・どうしたんだ?スィン」

そのまるで危機感を感じていない発言に、眉根に皺を寄せるスィン。
だが、彼らは自分とは違うのだから、と自分に言い聞かせる。

「・・・囲まれてるわ。それも、相当な数よ」
「囲まれてる・・・!?」

そういって辺りを見回すパレドリィ。彼が唾を飲み込む音がはっきりと聞いて取れた。

「・・・たしかに、様子が変だ。・・・どうする?」
「ロビンを起こして。一気に馬の所まで走るわ」
「ああ・・・おい、ロビン」

スィンは、改めて周囲を見回し、チッと舌打ちをする。

「・・・そんな時間もない、か・・・」

そう呟いて、スィンは茂みに向かって槍を構える。すでに茂みからは、十数頭のカシャディが顔を覗かせ、その瞳を金色に光らせていた。

「パレドリィ、ロビン!先に行きなさい!」
「お、おい、スィン!」

パレドリィは最低限の鎧だけを纏ってすぐさまテントから飛び出していたが、ロビンの方は今回の狩りで得たパルトスの皮や牙、爪などを詰めた麻袋を後生大事抱えて出てきた所だった。

「お、おいパレドリィ」
「走りなさい!」

そのロビンを見てもスィンはそれだけ言ってその背中を押した。
そして、その瞬間三人にカシャディの群れが飛びかかる。

「うわあぁぁぁぁっ!?」

が、次の瞬間パレドリィとロビンに向かって飛びかかるカシャディをスィンの槍がうち払っていた。

「早く走りなさい!」
「ス、スィンはどうするんだよ!?」
「時間稼ぎをする!・・・早くっ!」
「あ、ああ・・・!」

それ以上問答をしている暇はないとパレドリィも悟ったのか、ロビンを連れて馬を繋いである木まで走っていく。

「スィン、お前も、すぐに来るんだろう!」

走りざま、後ろを振り返って叫ぶパレドリィ。

「行きなさい!」

スィンは、最後にそれだけ言ってカシャディの群れに向き直った。
そして、飛びかかってくるカシャディをいなしながら、ふっと小さく呟く。

「これで・・・これで罪を・・・」



「事情はわかりました。・・・ですが、過度な期待はしないでください。私に出来る事が残っていない可能性も十分あるのですから・・・」

ホライゾン・ヒル。スォードは駆け込んできたパレドリィとロビンの言葉を聞き終えると、静かにそう言った。
状況を察すれば、正直なところスィンが生き残っている可能性は低い。今まで、スォードはこういう状況に何度も立ち会い、そして結果を見てきている。

「そりゃ、そうかもしれないけど・・・だからって」
「勿論。最善を尽くします」

その言葉に嘘はない。だが、それ以上の事を言う事はできず、スォードは無言でジルジラを呼び寄せる。

「行きますよ、ジルジラ」

詰め所の表でスォードを待つジルジラにそう呼びかけ、スォードはジルジラにまたがる。

「頼む、スォード。こんなんじゃ、俺は・・・」
「わかっています。・・・ですが、1人の人間がやれる事というのは、そう多くはありません・・・。では」

スォードがジルジラの首筋を軽く叩いてやると、それに応えるようにジルジラは大きくいななき、空に舞い上がっていく。

(自分にやれる事をやる。人に出来る事なんて、その程度なのですから・・・。)

スォードはジルジラの背で全身に風を感じながら小さくそう呟いた。
(*)カシャディ
四脚の肉食獣で、外見は犬科の動物に似ているが、遙かに大型。白〜灰色の毛並みは個体差があるものの、純白に近ければ近いほどその毛皮は高値で取引される。
通常人間を襲う事はほとんど無いが、空腹時、発情時、もしくはそのテリトリーを犯した時などに限り、対象を問わず牙を剥く。




カシャディの群れのただ中に取り残されたというスィン。生存している場合、必要な物資とは・・・。

・スィンの荷については、カシャディに荒らされている可能性がある。とは言え、場所が水場だけに水は必要ないはずだ。

・必要最大限の物資を運んだとしても、一人の人間が対象であれば重量に余裕は出来る。なので、応急手当のためにも清潔な衣類も運びたいところ。

・ホライゾン・ヒルに運ぶにしても、スィンの状態を確かめる必要がある。そのため、ひょっとしてその場に一日程度とどまる必要があるかも知れない。




*これらの状況を踏まえ、必要な物資を決定し下記アドレスの○の部分に打ち込んでください。*

http://www116.sakura.ne.jp/~jr/eventfmhsin○○○○○.htm

左から食料・水・医療品・露営具・その他救助物資となります。

例・必要な物資が食料1・水2・医療品2・露営具3・その他救助物資2の場合
http://www116.sakura.ne.jp/~jr/eventfmhsin12232.htmとなります。





□ ルール説明
救助に赴く際、スォードはジルジラという飛竜を使って移動します。
負傷者の運搬や水、食料、医薬品と言った物資も同時に運ぶ事になりますが、ジルジラに積める物資の量は数値に直すと最大で10までしか運べません。状況を洞察した上で、必要な物資のみを選別して救助に向かってください。
ただし、必ずしも重量を10まで物資を積まなければならない訳ではありません
ですが、仮に重量を7までしか積まなかったとしてもジルジラの移動速度が変わる事はありません。
ジルジラの背にはスォードに加えて一度に1人しか乗せる事は出来ません。
また、状況によってはスォード自身も人数に入れる必要があるので注意が必要です。

□ 救助物資種類
食料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 基本重量」=「1人分」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 基本重量」=「2人分」
医療品・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 基本重量」=「2人分」
露営具・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 基本重量」=「3人分」
その他救助物資(衣類、ロープ等)・・・・・・・・ 基本重量」=「1人分」

各救援物資には、持ち運ぶのに基本となる重量があり、それを減らす事は出来ません。
(水であれば基本重量2=2人分ですが、これを重量1=1人分にする事は出来ません。
どうしても三人分の水が必要ならば、水2×2人分=4人分の水を運ぶ必要があります)


つまり、各物資はその基本重量×nという数値にしかなりえません。







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