- ハウンドドッグ・ミーネ -

ホライゾン・ヒルにはすでに1年以上は滞在しており、実力で言えばベテランハンタークラスの実力を持つ。

俗に言う「獣人」であり、また獣人に対する差別意識の強い国から来たようで、終始人の顔色を伺っている。が、スォードから体術を教わっており、元来の身体能力の高さを加え、すでに人間以上の能力の片鱗を見せつつある。

武器はカタールと呼ばれる中央大陸の東南地域の少数部族が使っている物をヒントに以前彼女に目をかけていたハンターが作らせた物。加えて、スォード仕込みの体術で狩りを行う。



- ハウンドドッグ・ミーネ -
ガァッ!」

ミーネの鋭い回し蹴りがスォードのこめかみを捕らえる。
・・・かに見えたが、間違いなく直撃すると思われた蹴りを、スォードは一瞬にしていなす。
そして、次の瞬間にはその軸足を払い、そのままミーネを地面へと倒れ伏さしていた。

「ミーネ。蹴りの威力も、速度も、重要なのは軸足です。そこがおろそかになっては実戦では役に立ちません」

そういってスォードはミーネに手を伸ばす。その手を取って、ミーネは立ち上がろうとする。
・・・と見せて、ミーネはそのままスォードの手を取ってその体を引き寄せ、顎に目掛けて掌底を放った。
が、その一撃もスォードは体をひねって難なくかわし、その勢いのまま遠慮会釈無くミーネを再び地面にたたきつけていた。

「視線と、殺気です。相手の裏をかくにはね。技はともかく、まだまだその辺りの気配りが足りませんね」
「う、うう・・・」

スォードに組み敷かれ、ミーネは伏してうなった.


「じゃ、今日はこの辺りにしておきましょう。体調管理には重々気をつけて」
「あ、ありがとう。スォード。また、お、お願い」

ミーネはたどたどしく礼をいうと、ぱっと駆け出していった.

「いつも精が出るな、スォード」
「・・・ケーニッヒ。覗き見などしなくても、堂々といてくれてかまわないといつも言ってるじゃあないですか」
「お前がよくても、あっちの嬢が嫌がる」

そう言って姿を表したのは、スォードと同じくセイバーの一人であるケーニッヒ。
元は壊し屋ケーニッヒ、と渾名される凄腕の傭兵だったと言うが、どういう理由でか今はホライゾン・ヒルでスォードと同じくセイバーをやっている。

「しかし、相変わらずだな。今教えてるのはなんなんだ?」
「今は極把拳ですね。東国の打撃メインの格闘技ですが、彼女には力の使い方が学べるものが良いと思いまして」
「極把拳・・・少し聞いたことがあるな。踏み込みが重要なんだったか?」
「そうですね・・・震脚といいます」
「なるほどね・・・。で、あの娘の覚えはどうなんだ?」
「知識的な部分での覚えなんかで言えばやや難アリと言ったところですが。それにしても、やはり根本的な身体能力が我々とはまるで違いますね.天性のものもあるのでしょうが、飲み込みは恐ろしく早い」
「さすが獣人と言ったところか」
「・・・ケーニッヒ」

何気なくケーニッヒがこぼした言葉に、すっとスォードの目じりがつりあがる。

「あ、いや、すまない。悪気があった訳じゃない。こういうのも、お前の言う悪癖なんだろうな?」
「・・・すみません。ま、誰が悪いと言うわけではないんですよね・・・」


「しかしよ、何だって獣人なんだよ?」
「・・・仕方ないだろ.ガースティンは都合がつかないって言うし、ジーニアスは入院中だ」
「だからってよ、獣人の手を借りるなんてな」
「ま、いいんじゃねぇの?格安なんだろ。獣人らしくせいぜいこき使ってやりゃあいいじゃねぇか」
「イェンス・・・」
「なんだよ、カルル。お前ひょっとして、あの獣人に気でもあるのかぁ?」
「何をガキみたいな事を・・・。どうかしてるぜ、ヴァレーリオ」

ホライゾン・ヒル西側の街道。そこに三人のハンターが集まっている.
少々腹の脂肪が目に付くヴァレーリオ。若手のカルル。頬のこけた顔がどこか薄ら寒い印象を与えるイェンス。
三人ともホライゾン・ヒルにやってきた時期も年齢もバラバラだが、馬が合うのか、それとも他に理由があるのかは定かではないが狩りに赴くにあたっては三人でチームを組むことが多かった。
その三人の元に、馬にまたがったミーネがやってきた。

「けっ・・・獣人風情が。馬に乗れる身分かよ」
「よせよ、ヴァレーリオ。聞こえるぜ」
「・・・こんにちは」

ミーネは馬から下りると、三人の顔色をうかがうようにしながらおずおずと挨拶をした。
「ああ・・・カルルだ。よろしくな」
カルルはそう言って挨拶を返したが、ヴァレーリオとイェンスは黙ったままだった。
「・・・こっちがヴァレーリオ。こっちがイェンス。二人とも頼りになるぜ」
「ま・・・お手柔らかにな」
カルルにフォローされ、イェンスはそう返事を返したが、ヴァレーリオは依然として憮然とした表情のままだった。


「ジャッ!」
獣のような雄たけびを上げ、ミーネの左手のカタールがパルトスの喉笛を切り裂く。
そのままカタールを振りぬき、パルトスの眉間に突き刺すことでようやくパルトスが動きを止めた。

「・・・いい手並みだな。さすが、スォードが紹介してくれただけの事はある」
ミーネとは離れたところでヴァレーリオ、カルル、イェンスの三人がもう一頭のパルトスを仕留めて戻ってきた時、
ちょうどミーネがパルトスを仕留める場面にでくわした。
「へっ。共食いだな」
ヴァレーリオは剣の血を拭いながらそう言った。
「ヴァレーリオ!」
「なんだ?文句でもあるのかよ?」
思わず衝突しそうになるカルルとヴァレーリオの間にイェンスが割って入った。
「よしな、お二人さんよ。ヴァレーリオ。いちいち突っかかるんじゃねぇよ。獣人がどうあれ、今は狩りの最中だ。気に入らなけりゃ街へ帰りな」
「イェンス・・・」
カルルは思わぬ援軍に驚きを隠せないといった表情だ。
「勘違いするなよ、カルル。今は人手がいるからな。俺だって本当は獣人なんぞがここにいる事自体、きにいらねぇ」

そんな三人のやりとりを見やりながら、ミーネは自分の体を抱くようにしてじっと押し黙っていた。


この世界で、いわゆる獣人と呼ばれる人種には大別すると二種類がある。
400年ほど前、魔帝アルピニアが人間を素材として作り上げたもの。
そしてそれ以後、魔獣、もしくはその獣人と人間の間に生まれた者。
前者は姿形こそ人に似ているものの、その性質は魔獣と同様に人間に対して仇を成すもので、およそ人とは言い難い。
だが、後者は一概にそうとも言えず、魔獣の性質を強く継ぐ者もいれば、人としての性質が強い者もいる。
後者で、特に人としての性質を強く残した者は、結局人の世で暮らさざるを得ないが、そういった者達が人の世で暮らしていくのはのは容易なことではない。
昼の町は歩けず、就ける職も屠殺人、下水掃除夫等といった最下層のものだけ。
それでも生活が出来ればよほどマシなほうで、大抵の場合、多くの獣人は奴隷として人に飼われていた。
それにしたところで、まともな食事が与えられるのも稀で、天寿をまっとう出来る者など皆無であった。

ミーネの場合は、ミーネの母親がハーフ・モンスターで、彼女はクォーターにあたる。
彼女が生まれたのはとある街の貴族の屋敷だ。父親は不明。だが、口にするのもはばかられるような事があって、彼女が生まれるに至ったのであろうというのは想像に難くない。
そこでは、ミーネに名前などはなく、ただ玩具や道具のように扱われるだけの存在だった。
そんな生活が10年も続いた頃、彼女の母親が死んだ。
死因は、一言で言えば虐待死。
母とは言っても、その外見はまだ哀れなほどに幼い娘であった。
その母の死をきっかけに、ミーネは屋敷から逃げ出し、放浪の末、このホライゾン・ヒルにたどりつくことになった。
彼女に、ハウンドドッグのミーネという名を与えたのはスォードである。
そこで、ミーネは生きる術のひとつとして、スォードから武術を学ぶことにもなった。
このホライゾン・ヒルは世の中から隔離された場所だ。
ここにおいては、あらゆる人間が種族や性別を問わず平等な立場にあった。
少なくとも、ここでは彼女に服従を強いる事の出来る人間はいないはずなのだ。
が、それも表向きのことで、獣人に対する差別意識の強い人間からは、ミーネはさまざまな嫌がらせを受けた。
しかし、そんな嫌がらせなどは彼女が暮らしていた屋敷で受けていた仕打ちと比べれば、無いも同然だった。

だから、彼女にとってヴァレーリオの台詞などは刷り込みとなるほどに幼い頃から聞かされてきた台詞で、今更その事に疑義があろうはずもない。
だが、ミーネはひどく気持ちが沈んでいる自分を見つけていた。

(なぜ・・・だろう?こんな事は、当たり前の事なのに・・・)

ミーネがその事に思いをめぐらせるよりも早く、彼女の鼻と耳が迫り来る危険を察知していた。

「・・・あ、あの!み、皆さん。ここは危ないです。早く、は、離れましょう」
「あ?」

そのミーネの突然の言葉に、三人のハンターは一様に訝しげな顔を向ける。

「・・・何かあるのか?」
「も、もうすぐ、ここにラ、ラウ、ウェイがきます。は、早く、逃げたほうが、いいです」
「ラウ・・・ウェイ?」
「・・・ひょっとして、ラグウェンの事か?」
「そ、そうです。だから、早く、逃げたほうがいいです」

そう訴えかけるミーネの首をヴァレーリオが無造作に掴んだ。

「っ・・・!?」
「ふざけた事言ってんじゃねぇぞ!獣人風情が!どうせ俺達に一杯くわせようって腹なんだろう!」
「お、おい!?ヴァレーリオ!」

慌ててカルルが制止しようと割って入る.イェンスその横でなにやら考え込んでいる。

「止めるなよ、カルル!こんな獣人が言うことなんざ、信用できるわけがねぇだろう!」
「う、う・・・」

スォードから武術を学んでいるミーネにすれば、この程度の拘束はすぐさまふりほどく事は出来たが、彼女はその人生において人間を傷つけてはならない、人間に抵抗してはならない、人間に反抗してはならない、人間に従わなければならないと刷り込まれていたから、ヴァレーリオに対してもその記憶が邪魔をして、手を出すことはできなかった。

「こいつら獣人はな、人間様に尻尾を振ってご機嫌をとるくせに、何かあればすぐに裏切るケダモノよ」
「いいから、よせ!ヴァレーリオ!」

手を緩めようとしない、ヴァレーリオからミーネを無理やり引き剥がすカルル.
軽く咳き込むミーネ。

「へっ。ラグウェンが本当に出てくるってのなら、いい機会じゃねぇか。

ヴァレーリオがそう嘯いた瞬間、その場にいた全員が何か重い何かが大地を踏みしめる音を聞いていた。

「・・・悪いが、俺は抜けさせてもらう」
イェンスは、その音を聞くなりカルル達を省みることもなく、それだけを告げるとあっという間に去っていった。
「イェンス!」


「はっ・・・はっ・・・ち、きしょう・・・」
木の根元にもたれかかり、荒い息をつくヴァレーリオ。左足に包帯が巻かれているが、その下からは血のにじみがどんどん広がっていく.

「おい、ヴァレーリオ・・・!」

カルルが今にも泣き出しそうな顔をしてヴァレーリオの肩を揺さぶる。

「触るんじゃねぇよっ・・・くそっ・・・!」

あの後、ラグウェンに立ち向かっていったヴァレーリオだったが、やはり彼には手に余る獲物だった。
結局左足に重傷を負い、こうやって息をひそめて隠れる事態になった。
まだ、すぐそばでラグウェンが徘徊している気配を感じる。諦める気配はないと見えた。

「だ、だい、じょうぶですか・・・?」
「近寄るんじゃねぇよっ・・・!獣人風情が・・・!」

ヴァレーリオの傷口に伸ばそうとした手を思わず引っ込めるミーネ。

「ヴァレーリオ!お前まだそんな事を・・・!」
「うるせぇ・・・!」
「・・・か、カルルさん・・・。バ、バレリオさんを、つ、連れて歩けますか・・・?」
「ミーネ・・・?あんた、何を・・・」

ミーネは、ちょっと困ったように苦笑した。

「わ、私、が、ラウウェイをひきつけますから・・・そ、その間にここから離れて下さい・・・」
「ミーネ!?」

驚くカルルを尻目に、ヴァレーリオはミーネに鋭い視線を向ける.

「信用しろってのかよ?獣人、ごときが・・・」

そのヴァレーリオの言葉に、ミーネは泣き出しそうな笑顔を向けた.

「か、カルルさん・・・ヴァレリオさんを、お願いします・・・」
「お、おいっ!ミーネ!」

カルルが制止するまもなく、ミーネは木の陰から飛び出し、ラグウェンに向かって飛び掛っていった。



「・・・大丈夫.命に別状はありませんよ.しばらくすればまた狩りにだってでられるようになります」
「す、すまねぇ、スォード・・・迷惑をかけた・・・」

スォードはちょうど救助要請のでたチームの救出に向かい、ホライゾン・ヒルに戻ってきたところだった。

「スォード・・・ちょっといいか・・・」

そう言って、そのスォードの前に現れたのはひどく憔悴した顔のイェンスだった。

「・・・イェンス?ヴァレーリオに、カルル・・・ミーネと一緒だったのでは?」
「ああ・・・ちょっと、モメてな・・・。ひょっとしたら、もう三人とも死んでるかもな・・・」
「何があったんです?」
「ラグウェンに出くわしてな・・・二匹のな。そこで、ヴァレーリオと獣人の娘がモメてな・・・わかるだろ?」
「・・・!どうなったんです?」
「わかんねぇな・・・俺はその時にこりゃヤバイってんで逃げて来たからよ・・・」
「・・・わかりました。すぐに出ましょう」
「・・・そうかい?」
「そうですよ。大事になっていなければそれでいいんです。イェンスも、そう思ったからそれほどまでに急いで知らせに来てくれたのでしょう?」
「へっ・・・俺はただの根性なしさ・・・そんなんじゃねぇ・・・」
「・・・行きます。イェンスは、ゆっくり休んでください」













































※極把拳
東国に伝わる実戦格闘技。靠撃と呼ばれる肩や背中を用いた全身の体重を乗せた打撃技と、震脚と呼ばれる地面を踏みつけるような動作が特徴。















































































※魔帝アルピニア
400年ほど前に突然現れた魔王。魔獣と呼ばれる凶悪な獣を無数に生み出し、世界を混沌の渦に引き込んだ。その後、後に聖戦士と呼ばれる事になる戦士達に討たれる。現在に至るまで、その動機、目的、正体の一切が不明である。















































※ラグウェン
剛蹄目。
二足歩行する中型の獣。
本来は雑食性の獣だが、今の時期は発情期で、人間を襲う事もある。
獲物としてはあまり高価がつかないので、その危険性との問題で積極的にラグウェンを狩ろうというハンターは少ない。




イェンスの情報に寄れば、ミーネ、ヴァレーリオ、カルルの三人が二匹のラグウェンに襲われたらしい。ミーネの性格を考えると、あまり想像したくない事態に陥っている可能性がある。

・まず、物資の内容を考えると重量は10全てを積み込む必要がある。

・内容としては、彼ら全員が負傷している可能性。そして、彼らが荷を失っている事が考えられる。

・ジルジラに乗せられるのは一人だけ。その場合、その一人は最も早く運ぶ必要がある者である。その一人には、応急手当と清潔な衣類を用意しなければならない。また、その場合その場に二人の人間が残される事になる。そこで残される二人のために、丸一日を過ごすための物資が必要だ。




*これらの状況を踏まえ、必要な物資を決定し下記アドレスの○の部分に打ち込んでください。*

http://www116.sakura.ne.jp/~jr/eventfmhmn○○○○○.htm

左から食料・水・医療品・露営具・その他救助物資となります。

例・必要な物資が食料1・水2・医療品2・露営具3・その他救助物資2の場合
http://www116.sakura.ne.jp/~jr/eventfmhmn12232.htmとなります。





□ ルール説明
救助に赴く際、スォードはジルジラという飛竜を使って移動します。
負傷者の運搬や水、食料、医薬品と言った物資も同時に運ぶ事になりますが、ジルジラに積める物資の量は数値に直すと最大で10までしか運べません。状況を洞察した上で、必要な物資のみを選別して救助に向かってください。
ただし、必ずしも重量を10まで物資を積まなければならない訳ではありません
ですが、仮に重量を7までしか積まなかったとしてもジルジラの移動速度が変わる事はありません。
ジルジラの背にはスォードに加えて一度に1人しか乗せる事は出来ません。
また、状況によってはスォード自身も人数に入れる必要があるので注意が必要です。

□ 救助物資種類
食料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 基本重量」=「1人分」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 基本重量」=「2人分」
医療品・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 基本重量」=「2人分」
露営具・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 基本重量」=「3人分」
その他救助物資(衣類、ロープ等)・・・・・・・・ 基本重量」=「1人分」

各救援物資には、持ち運ぶのに基本となる重量があり、それを減らす事は出来ません。
(水であれば基本重量2=2人分ですが、これを重量1=1人分にする事は出来ません。
どうしても三人分の水が必要ならば、水2×2人分=4人分の水を運ぶ必要があります)


つまり、各物資はその基本重量×nという数値にしかなりえません。







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