- 鳳仙花 -


ホライゾン・ヒルにやってきたのは3ヶ月ほど前。
派手好きな性格で、狩りには積極的に参加する。東方の国から来たと自称する。

素早さを信条とした攻撃を主軸にしており、その連続攻撃には見るべき物がある。やや自信家のきらいがあるものの、腕はそれなりに立つようだ。東方の国に存在が知られているニンジャの一党らしい。

武器は直刀の二刀流。見た目よりも軽量だが、切れ味はそれなりに高い。が、特別の業物という程でもないようだ。



- 鳳仙花 -

ホライゾン・ヒルには多種多様な人間が集まる.
とは言え、その多くは中央、もしくは西大陸の人間で東大陸から来た者は数えるほどしかいない。
西大陸と中央大陸は元々の文化的な起源等で共通する点も多いため交流も盛んなのだが、東大陸は独自の文化をもった封建的な国家が多く、また排他的な性質が強いためあまり他大陸との交流は盛んではない。

それはこのホライゾン・ヒルにも言えて、東大陸から来たと思しき人間はほんのわずかである。

「ね、それならあたしを連れて行かない?今回はサービスして技のひとつくらいなら見せてもいいわよ?」
「あ、ああ・・・悪いな、鳳仙花。今回はもう十分面子が揃ってるんだ。またな」
「ふーん、あ、そ。勿体無いわねぇ」

大仰に肩をすくめてみせるその女性は、ここでは鳳仙花と呼ばれている。
肌の色や目鼻立ちは中央、もしくは西方大陸寄りなのだが、キモノと呼ばれる東方大陸の装束を身につけていた。
本人曰く、「ニンジャとしての修行を受けた」という触れ込みで名が知られている。
事実、軽量かつ恐ろしく鋭いと評判の東方の剣-カタナ-を二本携え、身軽な動きで獲物を仕留める姿はそれなりの定評があった。

ニンジャ。東方の島国に存在すると言われる特殊な戦闘訓練を受けた戦士だと言う。
戦士と言っても暗殺や諜報活動を主な任務としているようで、その特性から中央や西大陸にはほとんど情報が伝わっていない。
だが、わずかに知られている情報だけでもニンジャがいかに卓越した戦士であるかが伺える。
曰く、千里の道を一日で駈ける。
曰く、巨大な動物を自在に召還し、使役する。
曰く、様々な術を用い、炎、水、風、雷といった事象を意のままに操る。
曰く、その戦闘力は文字通り一騎当千で、1人のニンジャは千の兵に勝る・・・など
そういった噂は眉唾物であればあるほど、現実的なニンジャの恐ろしさからくる誇張だともとれる。
そのようなニンジャに対し、中央や西方大陸の人間はある種憧憬の念に近いものを抱いていた。

にも関わらず、鳳仙花がいまひとつ敬遠されがちなのは、偏に金にうるさいが故だ。
自分の取り分を必要以上に請求し、また自分を必要以上に過大評価するような発言が多い。

「・・・なんだって今日に限って?」
「いや、すまん。先約があるのを忘れていてな・・・」
「しかしな・・・俺とグリエルモだけってのは」
「・・・なら、鳳仙花を誘えばどうだ?あの女とは二、三度一緒にやってるだろ」

キャノンボールにあって、そんな会話を交わしているのはドナテロとヤーン。
どちらもホライゾン・ヒルには一年以上滞在している中堅ハンターだ。

「鳳仙花・・・なぁ。俺はあの女、苦手だよ」
「まぁ・・・俺だって苦手だけどさ」

「誰がなんですって?」

そう言いあうドナテロとヤーンの間に鳳仙花がひょいと顔を覗かせる。思わず身を引くドナテロにヤーン。

「あ、ああ・・・鳳仙花か」
「・・・何か用か?」
「ご挨拶ね。折角手を貸してあげようと思ったのに」
「手を貸してくれるのはありがたいが、どうせまた取り分を4割だとか言うんだろ?悪いが、それなら他所をあたってくれ」
「ふーん。ニンジャの手を借りれるんだから、安いものだと思うけどね。・・・いいわ、じゃ、今回は山分けって事にしてあげる」
「・・・本当かよ?」
「疑り深いのね。仕事はちゃんとするわよ」
「なら、助かるが・・・改めて言うが、取り分は頭数で均等に割る。それでいいな?」
「くどいわねぇ」

肩をすくめて見せる鳳仙花。多少は自覚していたが、そこまで金の亡者だと思われていたというのは少々面白くない。

「よぅ、スォード。今日は休みかい?」
「やぁ、グェン。ちょっと一杯ひっかけにね」

そう言ってスォードがキャノンボールに現れると、1人のハンターが声をかけた。
「ジャックナイフ」の別名で知られるハンターで、セイバーに欠員が出た場合の次期セイバー最優先候補となっているハンターでもある。
セイバーの構成人数に特に制限は無いのだが、本人の希望として「もし誰か抜けるような事があれば、代わりにやってもいい」と
言っているため、次期セイバー候補として挙げられているのだ。

「そうかい?なら、一杯つきあうぜ」
「グェン、貴方は今日はオフですか?」
「俺はいつだってオフさ。気が向いたとき以外はな」
「なるほど、違いありませんね」

グェンはそう言うとスォードを連れ添ってカウンターの席についた。

「それはそうと、スォード。あの女、どう思う?」
「あの女?」
「あれだよ、あれ」

グェンはグラスを傾けながら、鳳仙花をあごで示した。ちょうど話がまとまったところなのか、
鳳仙花、ドナテロ、ヤーンの三人の前にグラスが運ばれてきたところだった。

「ニンジャだって?本当だと思うか?」
「・・・さぁ、どうでしょうね。しかしまぁ、どっちでもいいじゃありませんか。どちらにしても、それ相応の理由があるのでしょうしね」

そのスォードの言葉に、やれやれと肩をすくめるグェン。

「お前はいつもそれだ。一般論の国があれば、間違いなく王様になれるぜ」
「事なかれ主義なんですよ、私は」
「お前がそれを言うかよ・・・」

グェンはふっと苦笑した。

「ま、余計なトラブルにならなければいいですよ。セイバーとして言わせてもらえればね」


翌日。鳳仙花は、ドナテロ、グリエルモといった二人のハンターと共にアルビェエルと呼ばれる湿地帯を訪れていた。
狩の目的はビェエルダイトと呼ばれる中型爬虫類の皮だ。

「・・・ほんと、下手ねぇ。そんなに何度も斬りつけたら売り物にならないでしょうに」
ドナテロがようよう一匹のビェエルダイトと仕留めたのを横目で見ながら、鳳仙花は大仰に肩をすくめて見せた。
「・・・悪かったな」
そうドナテロが歯切れの悪いセリフしか返せないのも、その直前に鳳仙花がドナテロよりは手際よく一匹のビェエルダイトを仕留めていたからだった。

「お前な、少々自分の方が少々手際がよかったぐらいで、そんなに居丈高になるもんじゃないぜ」
「別に居丈高になんてなってないわよ。事実を述べただけでしょ?」

その鳳仙花の言葉に、グリエルモは眉根に皺を寄せた。
グリエルモは「風来坊」という呼び名で呼ばれることもあるハンターで、その由来はグリエルモが相当な範囲にわたって
世界各地を傭兵として旅してきたというところから来ている。
そんなグリエルモが酒の肴代わりに話す世界中の逸話は、キャノンボールではちょっとした名物となっている。

「・・・お前さ、あんまり調子に乗ってるといい加減痛い目に合うぜ」
「調子に乗ってる?・・・それって嫉妬じゃないのかしら。そっちの方がみっともないと思うけどね」

せせら笑うように肩をすくめる鳳仙花。

「・・・まさかお前みたいな女から『みっともない』なんて言葉が出ようとはね。ニンジャを騙るような奴が言うセリフかよ」

鳳仙花の態度がよほど癇に障ったのか、吐き捨てるようにグリエルモがそう言うと、鳳仙花の顔色がさっと変わった。

「・・・誰が、何を騙ってるって?」
「お前が、ニンジャを、だよ。知らないとでも思ってんのかよ?俺ぁな、10年ほど前にしばらく東方の島国にいたことがあるんだよ。
ニンジャのいる国にな。本物のニンジャなんて見たことは無いが、だからこそお前がペテン師だってのは嫌ってほどわかるぜ」
「本物を見たことがない?・・・よくもそれで人をペテン師扱いできるものね」
「・・・あのな、じゃあ言ってみろよ。ニンジャってのはそもそも何なのか。どういう存在なのか」
「何言ってるのよ?ニンジャってのは、東方の島国に存在する特殊な訓練を受けたごく少数の戦士の事。何を今更」
「だろうな。お前が知ってる事なんてそんなこったろうよ。いいか、ニンジャってのは隠密なんだ。
秘密裏に敵の情報を探ったり、要人の暗殺をしたりな。そして、その情報統制は徹底してる。個人の意思でニンジャを止める事なんて
できやしないんだ」
「ニンジャだって、一枚岩じゃないわよ。あなたの知ってることが全てだとでも思ってるの?」
「へっ。誰もそんな事は言わねぇよ。けどな、確実にいえるのはお前みたいに、自分がニンジャだなんて吹聴してまわるニンジャなんて
絶対にいねぇんだよ。お前のどこが隠密だってんだ?この詐欺師め」

いい加減面倒だと言った風に、一気にまくし立てるグリエルモ。最初こそ涼しい顔をしていた鳳仙花に、明らかにあせりの色が見えるようになってきた。

「ふ、ふん。憶測でよくもそこまで他人の事をこき下ろすことができる物ね。感心するわ」
「こっちこそ感心するぜ。大方、ニンジャを騙って名をあげようって魂胆なんだろうけどよ。
少なくとも、お前がニンジャだ、なんてお前とチームを組んだことのあるハンターなら誰も信用なんてしてないんだぜ。
そんなのを鵜呑みにしてるのは、ド素人ぐらいだってのに、お前はそんな事にも気がついちゃいない」
「な、んですって?」
「当たり前だろ。お前みたいな少々腕が立つ程度でペラペラと自分がニンジャだ、なんて吹聴してる人間を誰が信じるんだよ?
誰も何にも言わないのはな、お前がニンジャを騙ろうがなんだろうが興味なんてないからだってのによ。
ちょっと勘のいいハンターなら、お前がニンジャニンジャって騒ぎ立ててるのを内心せせら笑ってるんだぜ。
知らぬは本人ばかりなり、か。笑わせるぜ」

「ふ、ふざけるんじゃないわよ・・・!デタラメな事っ・・・!」
「まだ言うのかよ?似非ニンジャが?」

口論を続ける鳳仙花とグリエルモを見かね、ドナテロが間に割って入った。

「二人とも、もうよせって。まだ、狩りは終わっちゃいないんだから・・・」
「お前はいいのかよ?こんなペテン師の小娘にいいように言われて」
「だ、誰がペテン師よっ・・・!」
「い、いいじゃないか。別に、鳳仙花がニンジャであろうがなかろうが、腕が立つのは確かなんだから・・・」

ドナテロの場をとりつくろうようなセリフを聞いて、グリエルモは口をゆがめて笑った。

「そういうこった。つまり、お前さんは誰からも口ばかり達者なペテン師だが、多少は腕が立つからまぁいいか、ぐらいにしか思われてないってことなのさ」

気がつけば、鳳仙花の顔色は蒼白になり、指先は小刻みに震えている。が、それでも表情は強気を装っており、それがむしろドナテロには痛々しく見えた。

「私は・・・私は、東方で修行したニンジャなんだから!あんたみたいな奴に何がわかるもんですか!」
「・・・全く救えないね。いっそ、俺がホライゾン・ヒルで言いふらしてやろうか?あの鳳仙花って女は、ニンジャでもなんでもないただのペテン師だってな。その方がお前さんも諦めがつくだろが?」
「おい、グリエルモ。もうよせって・・・。鳳仙花、俺は、あんたの腕前は認めてるんだ。だから、そんなに気にしなくていいぜ」

鳳仙花はしばらく黙り込んだかと思うと、ぎゅっと拳を握り締め、顔を上げてグリエルモとドナテロに向き直った。

「・・・いいわ。だったら、私が本物のニンジャだって証明してみせるわよ。たしか、ここから西へ下ったところにはアーロンビェエルがいたわよね。あいつを私が1人で仕留めたら、私がニンジャだって認めざるを得ないでしょう?」
「アーロンビェエルを、お前1人で?やめとけ。出来るわけないだろ。まぁ、しかしもし出来たらお前がニンジャだって認めてやるよ。
俺が街の連中にもそう証明してやる。できたらの話だけどな」
「お、おい・・・鳳仙花・・・グリエルモ」
「いいわ。見ていなさい」

鳳仙花はそれだけ言うと、さっと身を翻して森の奥へと姿を消していった。


「けどさ、やっぱり大人げなかったんじゃないか・・・?」
「まだ言ってるのか?大体、あの女はお前も気に食わないって言ってただろう」

それからおよそ一日後。ホライゾンヒルに戻ってきたグリエルモとドナテロはキャノンボールで酒を呷りながら鳳仙花のことを話していた。

「それとこれとは別だろう。それに、もし、鳳仙花が本当にアーロンビェエルを仕留めようとしたら・・・」
「あの女にそんな度胸あるわけないだろ?せいぜい1〜2日遅れて帰ってきて必死に狩りをしてましたってな芝居でも
するのがオチさ」
「それならそれでいいんだけどな・・・」
「そんなに心配なら、一応スォードに話しておいたらいいんじゃないか?あいつなら、そんな話をぺらぺら言いふらすこともないだろうし
鳳仙花だけ帰ってきてないことを気にしてもいただろ」
「・・・・・・そうだな。一応、伝えておこうか・・・」

そのドナテロの反応に、グリエルモはやれやれと肩をすくめた。


「・・・なるほど。それで喧嘩別れになって、先に帰ってきたわけですか」
「まぁ、な。どうにも、俺が割って入れる状態じゃなくてさ」
「わかりますよ。・・・しかし、やはり心配ですね?」
「え?ああ・・・そりゃ、な。もし、これで鳳仙花が帰ってこなかったら、って考えるとな・・・」

スォードはドナテロの話を最後まで聞き終えると、何も言わずに席を立った。

「スォード?」
「幸い、今日は他に仕事も入っていませんし、私が鳳仙花の事を見てきますよ。大事になってからでは遅いですからね」
「・・・悪いな。あんたが、いつも身を粉にしてくれてるのは知ってるんだが・・・」
「なーに。話を聞いてしまった以上、これで鳳仙花の身に何かあれば責任は私にもありますからね」
「あ、いや、俺はそういうつもりじゃ」

スォードは狼狽するドナテロの肩にぽんと手を置いた。

「お気になさらず。・・・しかし、お互い損な性分ですね?」


































































































































※ビェエルダイト
甲殻長吻種。
全身を堅い表皮に覆われた水棲肉食動物。大きな顎が特徴で、自分よりも大型の生物に対してもその巨大な顎と鋭い牙で食らいつき、体を回転させて獲物をバラバラにして補食する。
その皮は加工すると美しい光沢を放つようになり、都市部の人間から珍重されている。



































































































※アーロンビェエル
古手吻種。
四つ足で歩行するビェエルダイトの亜種。が、ビェエルダイトよりも二回り以上大きく、背中から補食用の無数の触手を生やしているのが特徴。
この湿地帯周辺の獲物の中では最も危険とされる獰猛な生物だが、その危険に見合うほどの見返りが無いため、率先して仕留めようというハンターはまずいない。



鳳仙花はアーロンビェエルを仕留めるため、単身危険な狩り場に残っているという。
アーロンビェエルは相当手強い獲物で、もし鳳仙花が返り討ちにあったとしたら・・・。

・鳳仙花が狩り場に残って丸一日。もし、彼女がアーロンビェエルに返り討ちにあったとしたら、その身はアーロンビェエルの巣穴に捕らわれていると思われる。

・アーロンビェエルの性質を考えると、運ぶ事さえ出来ないような状態、という可能性は低い。であれば、最低限の応急手当だけを施し、すぐさまホライゾン・ヒルへ運ぶべきだろう。

・物資をあくまで最低限に絞るのであれば、必要なのは・・・。




*これらの状況を踏まえ、必要な物資を決定し下記アドレスの○の部分に打ち込んでください。*

http://www116.sakura.ne.jp/~jr/eventfmhhsk○○○○○.htm

左から食料・水・医療品・露営具・その他救助物資となります。

例・必要な物資が食料1・水2・医療品2・露営具3・その他救助物資2の場合
http://www116.sakura.ne.jp/~jr/eventfmhhsk12232.htmとなります。





□ ルール説明
救助に赴く際、スォードはジルジラという飛竜を使って移動します。
負傷者の運搬や水、食料、医薬品と言った物資も同時に運ぶ事になりますが、ジルジラに積める物資の量は数値に直すと最大で10までしか運べません。状況を洞察した上で、必要な物資のみを選別して救助に向かってください。
ただし、必ずしも重量を10まで物資を積まなければならない訳ではありません
ですが、仮に重量を7までしか積まなかったとしてもジルジラの移動速度が変わる事はありません。
ジルジラの背にはスォードに加えて一度に1人しか乗せる事は出来ません。
また、状況によってはスォード自身も人数に入れる必要があるので注意が必要です。

□ 救助物資種類
食料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 基本重量」=「1人分」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 基本重量」=「2人分」
医療品・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 基本重量」=「2人分」
露営具・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 基本重量」=「3人分」
その他救助物資(衣類、ロープ等)・・・・・・・・ 基本重量」=「1人分」

各救援物資には、持ち運ぶのに基本となる重量があり、それを減らす事は出来ません。
(水であれば基本重量2=2人分ですが、これを重量1=1人分にする事は出来ません。
どうしても三人分の水が必要ならば、水2×2人分=4人分の水を運ぶ必要があります)


つまり、各物資はその基本重量×nという数値にしかなりえません。







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