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- ブルー・キャロル - | ||||
ホライゾン・ヒルには人種や国籍を問わず、実に様々なハンターが存在する。 そんな多様なハンターが集まるホライゾンヒルにあって、最も目を引くハンターと言えば?と問われれば、真っ先に挙がる名前がブルー・キャロルであろう。 ブルー・キャロルは女性である。とは言え、ホライゾンヒルには決して少なくない数の女性ハンターがいるのだから、それ自体が彼女が目を引く要因という訳ではない。 ブルー・キャロルが最も目を引くハンターだ、と言われるのは単純にその外見からきている。 というのも、ホライゾン・ヒルでハンターでいる限り、たとえ女であろうとも常に危険と隣り合わせである事は間違いなく、自分の身は自分で守るのがハンターの鉄則。そのためには最低限身を守るのに必要な格好と言うものがあるものだが、そういった格好というものは得てして地味なものだ。 が、ブルー・キャロルの格好というのは、そういった定石から大きく逸脱しているが故に、彼女こそホライゾン・ヒルにおいて最も目を引くハンターだと言われる。 「よぅ、ブルー・キャロル!」 そうやって彼女に声をかけるハンターは多い。が、声をかけられた当の本人はそのハンターを一瞥すらしない。 そう。確かに、ブルー・キャロルは人目を引いた。 見る角度によっては白銀に見えるほど鮮やかなブロンド。 エメラルドそのものといった色に輝く瞳。 白と青を基調に上品にまとめられたドレス・アーマー。 日傘でも持っていれば、上流階級層の住む町並みを歩いていても違和感がないであろうという風貌である。 だが、ここは辺境も辺境。屈強な狩人達が集う最果ての地、ホライゾン・ヒルである。 特異な容貌のハンターも多いとは言え、ブルー・キャロルよりも目を引くハンターというのもそうはいない。 「マスター、いつものね」 ブルー・キャロルはいかにも手馴れたという風にカウンターにコインを一枚放り投げる。 琥珀色の液体が注がれたグラスが運ばれて来ると、ブルー・キャロルはそれを口元に運び、少し傾けながら酒場をぐるりと一瞥する。 そんな彼女の様子を、酒場に集まったハンターたちのおよそ半数近くがひっそりと伺っていた。 ホライゾン・ヒルにおいてまるで場違いな程典雅な風貌に、憧れとも邪な思いともつかぬ感情を抱いているハンターは多く、彼女の姿がそこに在るだけで自然と衆目の視線が集まってくる。 そんな視線を知ってか知らずか、ブルー・キャロルはグラスを手にしたまま席を立ち、ゆっくりと周囲を歩き回る。 そういった好奇の視線を向けられても、ブルー・キャロルはまるで意に介した様子も見せず、ぐるりと周囲を一瞥して回る。 その様子は毅然として、どこか風格さえ感じられた。 そんなブルー・キャロルであったから、尾ひれのついた噂のひとつやふたつは当然の如くあるが、その噂の中でも口さがないハンター達が口にしているのが、彼女は男漁りにホライゾン・ヒルまで来たのだ、というものだ。 というのも、ブルー・キャロルはほとんど男性ハンターとしかチームを組まず、しかも一度チームを組んだハンターとはまずもう一度チームを組むことがない。 その上で、まるで男を値踏みするような発言が多いことから、そういう噂が流れるようになった。 とは言え、彼女と臥所を共にしたという男の話もなく、やっかみ半分で信憑性など無いに等しい噂ではあった。 「そうだな・・・あと、もう一人腕の立つ奴が欲しいな」 「そういうものか?」 「ああ。正直、俺もここに来てまだ日が浅いしな・・・」 そのブルー・キャロルの目に、そんな会話を交わす二人のハンターが目に入った。 一人はすでに一度チームを組んだことがあるハンターだ。仁義に厚い男という印象だったが、逆にその程度しか印象に残らなかった男でもある。 たしか名をブッフォンといった。 「よろしいかしら、お二人さん?」 ブルー・キャロルはその二人に歩み寄っていくと、愛想よく笑ってそう話し掛けた。 「あ・・・ブルー・キャロル?」 「立ち聞きするつもりはなかったのだけど、私でよければ付き合いましょうか?」 「誰なんだ?ブッフォン」 ブッフォンの隣に座っていた男が、怪訝な顔でブッフォンに耳打ちする。 ブッフォンが紹介するよりも早く、ブルー・キャロルはそのもう一人のハンターに自己紹介をする。 「はじめまして。私はブルー・キャロル」 「あ?ああ。俺はシェスタァ。・・・ここには、今日来たところ何だが、その、あんたもハンターなのか?」 そのシェスタァの口調は、好奇心はあれどブルー・キャロルを賊すような響きは含まれていない。 ホライゾン・ヒルがどういうルールをもとに回っているのか判断しかね、言動のひとつひとつに注意を払っているという気配だ。 それは、シェスタァに外観から全てを推察できると思っている訳ではない、という注意深さがある事を示している。 「ええ。おかしいですか?」 「いや・・・ブッフォンがこう畏まっているのを見れば、あんたがどういうハンターなのか少しは想像出来る。色々と迷惑を掛けると思うが、よろしく頼む」 ブルー・キャロルは内心「へぇ」と感嘆した。 初めてブルー・キャロルと顔を合わせた男がとる態度というのは大抵決まっている。 下心があってやけに下手に出るか、女だと舐めて傘に掛かった物言いをするか、だ。 そういう意味では、このシェスタァはまずは彼女のお眼鏡にかなったといっていい。 ただ、ブッフォンがブルー・キャロルに対して畏まっていたのは事実だが、それがどういった性質を持ったものなのか、というところまでは考えが及ばなかったとしても、それを責めるのは酷というものだろう。 「は・・・ぁっ!」 ブルー・キャロルが裂帛の気合と共に手にした剣を一閃する。 血の糸を引いて、パルトスの首がまるで人形のように地に転がった。 「凄いな・・・しかし」 その見事な剣捌きにシェスタァは思わず感嘆の吐息を漏らす。 「そうかしら?」 「ああ・・・剣もいいし、腕もいい」 「ありがとう」 ブルー・キャロルはふっと嘆息した。その平凡な反応に、実際のところ第一印象で感じたほどの洞察力はないのだろうと感じたからだ。 (悪くはないけど・・・剣の腕も二流・・・そこそこ頭も回るようだけど、学があるわけじゃない、か・・・) 「・・・60点てとこかしら」 「・・・60点?自分に厳しいんだな、あんた」 思わずこぼした独り言に反応したシェスタァの言葉にさらに苦笑するブルー・キャロル。シェスタァの後ろではブッフォンが苦虫を噛み潰したような顔をしていた。 「しかし、恐ろしく鋭い剣だな・・・。何か仕掛けでもあるのか?」 「ええ・・・魔力付与術式が施されている剣だから」 「へぇ・・・魔力付与武具か・・・実際につかってるところを見るのは初めてだな。・・・ちょっと見せてもらえないか?」 「ごめんなさい。私、自分の持ち物は他人に触らせないようにしているの。特に、自分が命を預ける剣にはね?」 ブルー・キャロルはそういうと剣についた血糊をぱっと払い、鞘に収めた。思わず伸ばした手を引っ込めるシェスタァ。 「そ、そうだよな・・・そりゃ、悪かった」 そのシェスタァの肩越しに、ブッフォンが大きくため息をつくのが見えた. その日、ブルー・キャロルらが仕留めた獲物は全部で6頭。そのうちの4頭はブルー・キャロルが一人で仕留めたものだ。 三人は、狩りを終えると近くの水辺に露営の用意を整え、焚き火を囲んでいた. ここはこの付近で狩りを行う際、ハンター達が露営するのによく使われる場所で、水辺には水を汲む用の桶が放置されていたりもした。 「しかし、あんたのその剣はこんな風にわざわざ研がなくても切れ味が落ちないんだろ?うらやましいよな」 シェスタァは顔を上げず、砥石で剣を研ぎながらそう言った. 狩りで剣を使えば、普通の剣ならば簡単に刃こぼれするし、斧や槍であっても二日とは持ちはしない。 そのため、狩りに出るハンターは必ず一人は砥石を持ってでかけるのだが、砥石はかさが高く、またかなり重量もあるためハンター達の悩みのひとつになっている。 が、ブルー・キャロルの持つ剣は切れ味をより鋭くする魔力が付与されているので、少々のことでは刃こぼれなどしないし、血や肉の脂でぬめってもそれほど切れ味が落ちることもない。 ブルー・キャロルはそんなシェスタァのセリフにも「そう?」という気のない返事を返しただけだ。 そんな様子に、ブッフォンは今日何度目になるかわからないため息をついた。 ブルー・キャロルが、興味を無くした相手にはとことん無関心なのを知っていたからだ。 故に、ブッフォンは今日ほとんどブルー・キャロルと会話をしていない。 また、ブルー・キャロルは狩りに出た際に得た報酬をほとんど受け取らない。今回で言えば、全体の3分の2はブルー・キャロルが仕留めたにも関わらず、ブッフォンがどう言おうと、彼女は申し訳程度の報酬しか受け取らないだろう。 その事柄ひとつをとって見ても、ブルー・キャロルが金が目的のハンターでないと言うことは明白なのだが、その目的はわからない。 だが、ブッフォンもブルー・キャロルには多少なり好意をもっていたから、そのブルー・キャロルのまるで眼中にすらないという態度を見るにつけ、思わずため息が出るのは止めようがなかった。 が、思わずため息がついてでるというのはブルー・キャロルも同じであった。 (全く・・・大陸を渡ってこんなに僻地まで来てしまったのに・・・) ブルー・キャロルはちらとブッフォン、シェスタァを振り返り、気取られぬ程度にふっと小さくため息をついた. 彼らに罪などないことは言うまでも無い。が、何ヶ月たっても変わらない現状には気が滅入る。 (そろそろ潮時かしらね・・・。) 翌日。半日狩りをした後ホライゾン・ヒルに戻る予定で、ブルー・キャロルたちは狩りを続けていた。 この日になっては、ブルー・キャロルはシェスタァともほとんど会話することもなかったが、その事を抜きにしても鋭い剣捌きで着実に獲物を仕留める彼女はブッフォンとシェスタァにはありがたかった. 「・・・?」 と、そのときふっとブルー・キャロルが足を止めた. 「どうかしたのか?」とシェスタァ。 「確か・・・この辺りは・・・」 ブッフォン、シェスタァの二人はもともと狩りの経験は浅いし、ブルー・キャロルとてホライゾン・ヒルにきてまだ三ヶ月程度。 だから、自分達が今いる場所が危険な場所だとしてもそれを確かめる方法がなかった。 「・・・私もよく覚えてはいないけど・・・確か、何とか言う凶暴な獣人がいる場所だったんじゃないかしら・・・」 ブッフォンとシェスタァに聞かせると言うよりは、独り言のようにつぶやくブルー・キャロル。 「そう・・・なのか?」 「い、いや、そういや俺も聞いたことがある・・・ラヴァイアンの獣人って、確か洞窟に住んでる奴だ」 「ラヴァイアン?」 「俺も人から聞いた話だ・・・せいぜい2、30匹程度しかいないらしいが、ヤバイ相手だって・・・」 「それが、この近くに?」 そう言って周囲を見回すシェスタァとブッフォン。周囲は森らしいかすかな動植物の喧騒が聞こえてくるばかりで、そんな危険な気配は微塵も感じられなかった。が、そんな話を聞いた後では、その静寂が森を不気味に感じさせる。 「・・・予定を切り上げたほうがいいかしら、ね」 「そうだな、成果は十分すぎるほどだし・・・」 「だな。荷物をまとめて戻ろうぜ」 シェスタァとブッフォンの会話を聞いて、露営した場所に戻ろうと一歩茂みに足を踏み入れるブルー・キャロル。 「あっ!?」 次の瞬間、シェスタァとブッフォンの視界からブルー・キャロルの姿が消えた。 慌ててブルー・キャロルが足を踏み入れた茂みを覗き込む二人。 見ると、茂みのすぐ反対側がちょっとした崖になっており、その下でうずくまっているブルー・キャロルの姿が見えた。 「おい、大丈夫か!」 と、ブルー・キャロルの頭上からシェスタァの声が届く。 「ええ・・・大したことないわ」 シェスタァを仰ぎ見て返事を返すブルー・キャロル。 が、落ちたときに捻ったのか、左足に激痛が走った. (痛っ・・・全く・・・なんて情けない) 折れていなければいいのだけど、と足を触って確認をする。 「ロープがいるな・・・すまない、ブルー・キャロル。ロープをとってくるから、少しまっていてくれ」 「お、おいっ、見ろ!」 ブッフォンが慌てた声で崖下の先にある茂みを指差す。 その茂みから、人に似たシルエットの全身を毛に覆われた生き物が一匹、二匹・・・と姿を表した。 手には原始的な石から削りだした武器を携えている。 「ラ、ラヴァイアンか!?」 「お、おい!ブルー・キャロル!逃げろ!」 シェスタァの声を聞くまでも無く、ブルー・キャロルは行動を起こしていたが、左足に走る激痛のおかげで立つこともままならない。 そのブルー・キャロルの様子を察したのか、じりじりと包囲の輪を縮めてくるラヴァイアン達。すでにその数は10匹を超えようとしている。 「くっ・・・」 ブルー・キャロルといえど、万全の状態であっても10数匹のラヴァイアンといえば手におえるような相手ではない。 ましてや、足を痛めたこの状態では、逃げることもままならない。 うかつに近づいてきたラヴァイアン一匹の腕を切り裂いたものの、それが連中の怒りを買い、その巨大な拳で無造作に腹部を殴られ、 岸壁にたたき付けられてブルー・キャロルは意識を失った。 「おいっ!ブルー・キャロル!」 「よせ!あの女はもう駄目だ!」 「見捨てるってのか!?」 「仕方ないだろう!俺達が出て行ってなんとかなるような連中じゃない!」 そのシェスタァとブッフォンのやりとりをラヴァイアン達がじっと崖下から見上げている. 「お、おい!シェスタァ」 「く・・・!ブルー・キャロル・・・!」 「とにかく、急いでホライゾン・ヒルに戻るんだ!スォードに連絡して、助けに戻ろう!」 「スォード!?」 「説明は戻りながらする!・・・俺だって、あの女を見捨てたい訳じゃない!」 「・・・なるほど、状況はわかりました」 スォードは帳面をつけていた手を止め、席を立った。 「行ってくれるのか!?」 ブッフォンは半信半疑でそう尋ねた。噂には聞いてはいても、実際にこうやってスォードの世話になるのは初めてなのだ。いくらスォードが優れたセイバーだとしても、一人であのラヴァイアンの群れに飛び込む度胸があるとは思えなかった。 「一刻の猶予もないのでしょう?」 そういいながら、スォードは詰め所の倉庫からなにやら必要なものを選んでいるようだった。 その自信に満ちた態度は、ブッフォンとシェスタァにとって信頼するに足るものだった。 「あの飛竜を使うんだろう!?なら、俺も連れて行ってくれ!」 身を乗り出しながらシェスタァがそう言う。 「・・・気持ちはわかります。ですが、ジルジラは一度に人間は二人までしか運べません。貴方を乗せてしまったら、ブルー・キャロルを連れて帰れないでしょう?それに、申し訳ありませんが私一人の方が確実なので」 スォードにそう言われては、ブッフォンもシェスタァも返す言葉が無い。 だが、そのスォードを見るに、ブルー・キャロルの事は任せようという気になる。 「・・・頼む。まだ、ブルー・キャロルには礼ひとつ言ってないんだ」 「そりゃ、あの態度にちょいと頭に来ることもあるが・・・それでも、あの女には死んで欲しくない・・・」 「力を尽くしましょう」 スォードはそう言うと、口笛でジルジラを呼び、その背にまたがって飛び立っていった。 ブッフォンとシェスタァはその姿が見えなくなるまで見上げていた。 |
魔力付与 エンチャント・マジックと呼ばれる物体に様々な属性や事象を停滞させる魔術。一度きりしか効用を持たないモノと、効用が永続するものがある。一般的に後者の方が術式が高度かつ複雑で、それが付与された道具はかなり値が張る。ブルー・キャロルが持っている剣は後者。 ラヴァイアン かつて魔王アルピニアが創造した魔獣が、他の種と交わる事で環境に適応し、今日まで生き残ってきた「半獣」の一種。 二足歩行、かつ道具も使用するが、それほど知能は高くなく、魔獣としての性質を色濃く残しているため人間に対してはかなり好戦的。 |
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*これらの状況を踏まえ、必要な物資を決定し下記アドレスの○の部分に打ち込んでください。* http://www116.sakura.ne.jp/~jr/eventfmhbc○○○○○.htm 左から食料・水・医療品・露営具・その他救助物資となります。 例・必要な物資が食料1・水2・医療品2・露営具3・その他救助物資2の場合 http://www116.sakura.ne.jp/~jr/eventfmhbc12232.htmとなります。 |
□ ルール説明 |
救助に赴く際、スォードはジルジラという飛竜を使って移動します。 負傷者の運搬や水、食料、医薬品と言った物資も同時に運ぶ事になりますが、ジルジラに積める物資の量は数値に直すと最大で10までしか運べません。状況を洞察した上で、必要な物資のみを選別して救助に向かってください。 ただし、必ずしも重量を10まで物資を積まなければならない訳ではありません ですが、仮に重量を7までしか積まなかったとしてもジルジラの移動速度が変わる事はありません。 ジルジラの背にはスォードに加えて一度に1人しか乗せる事は出来ません。 また、状況によってはスォード自身も人数に入れる必要があるので注意が必要です。 |
□ 救助物資種類 | |
食料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 基本重量「1」=「1人分」 |
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 基本重量「2」=「2人分」 |
医療品・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 基本重量「1」=「2人分」 |
露営具・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 基本重量「3」=「3人分」 |
その他救助物資(衣類、ロープ等)・・・・・・・・ | 基本重量「1」=「1人分」 |
各救援物資には、持ち運ぶのに基本となる重量があり、それを減らす事は出来ません。 (水であれば基本重量2=2人分ですが、これを重量1=1人分にする事は出来ません。 どうしても三人分の水が必要ならば、水2×2人分=4人分の水を運ぶ必要があります) つまり、各物資はその基本重量×nという数値にしかなりえません。 |