− キルケー −




 「お、お嬢様、お許しください!」
 
 キルケーの自室。これでもかと言わんばかりに高価な品で構成された部屋。その中央に座る少女が、このアンブレラ家の長女であるキルケー=クロウン=アンブレラだ。
 その目の前に、紅茶のポットをトレイに乗せて立つメイド。その紅茶を注がれたカップがひとつ倒れてトレイの中に薄い赤色の紅茶が広がっている。
 否、トレイの中だけではない。キルケーのスカートの裾にも、一つ小さな黒い染みが出来ていた。
 その原因を造ったメイドは顔を真っ青にして全身を震わせている。その震えによってトレイの中の紅茶がさらにこぼれ、瀟洒な絨毯に染みを作っていく。

 「あーあ。やっちゃったねぇ。どうする?どうしよっか?」

 さもつまらなそうにメイドを見上げながら、クククと少女は笑う。見た者の背筋が冷たくなるような笑み。

 「そうねぇ。じゃぁ、とりあえずそこから飛んでみようかぁ?」

 そういってキルケーは部屋の窓を示す。ここは館の四階だ。

 「お、お許しください・・・!お、お許しを・・・!」

 メイドは、真っ青になった後、真っ白になりトレイを置いて地面にはいつくばった。
 全身はこれ以上はないと言うほどに震えており、その顔が伺えればそれは恐怖に充ちているであろう事が容易に想像がついた。
 キルケーは、そのメイドの髪の毛を無造作に掴み、顔を上げさせる。そうして、逆の手でわざとらしく左目にかかった白布に手をかける。

 「ひっ・・・!ひっ・・・!」
 
 メイドの顔は蒼白になり、涙と鼻水でどろどろになっていた。
 キルケーはさも面白く無さそうに鼻を鳴らす。

 「ふん。アンタがこっから飛び降りたってどうなるの?いーから。さっさと部屋片づけたら?」

 「は、はは、はいっ!す、すぐにっ!」

 腰を抜かして立てないようで、メイドは四つんばいになったままバタバタと部屋を出ていく。
 
 「アンタじゃないわよ。別の者を呼びなさい。そんなザマで何ができんのよ?」

 メイドに一瞥をくれながら、キルケーは再び鼻を鳴らす。
 

 アンブレラ家。スティアート帝国にあっても有数の家柄を持つ貴族。その起源は1000年前の魔導大戦にまでさかのぼると言われる。
 それを裏付けるのが、かの家に代々伝わる”剣のゴーレム”と呼ばれるかつての大戦で使われたらしい鉄巨人。 アンブレラ家の長男、もしくは長女は生まれながらにこのゴーレムを操る魔眼”操錠の魔眼”を持つ。 この魔眼を持つ一族が時代と共に貴族としての性格をもつようになったというほうが正しい。
 キルケーはこの魔眼を持つ長女としてアンブレラ家に生まれた。
 そのため、彼女は赤ん坊よりも大事に育てられた。
 が、魔眼を持つ彼女は、家の財力と魔眼。そしてゴーレムの力によって、自分に逆らうことが出来る者は何者もおりはしないと思うようになった。
 仮に、時の皇帝だって気に入らなければ殺せる。子供らしいそんな自負さえあった。
 今では、実の両親でさえ彼女をもてあまし、ろくに顔を合わせようともしない。

 「ふん・・・」

 キルケーの体には大きすぎる椅子に体をもたえ、窓の外を眺める。
 最近は何をやっても面白くない。
 ちょっと前までは、さっきのメイドのように自分を見て怯える人間を見るのも面白かったが、今ではどうということもなくなってしまった。
 そして、キルケーがこうやって退屈になったとき、やることは決まっていた。
 無造作に左目にかかった白布をはぎ取る。
 キルケーの白い肌に似合わぬ真っ赤な魔眼が姿を見せる。

 「ゴーレム!」

 窓を開け、その窓枠に座って叫ぶ。
 次の瞬間、地鳴りがしたかと思うと、庭にしつらえられた噴水がはじけ飛び、中から黒金色の巨人が姿を見せた。
 
 「き、キルケー!どうしたと言うんだ!」

 下で、キルケーの父親が声を張り上げている。おおかた、キジ撃ちにでも行って来た帰りだろう。

 「ちょっと遊んでくるわ」

 ゴーレムの肩に乗り、父親を見下ろして言う。

 「よ、よしなさい!陛下から、次は注意ではすまぬとあれほど」

 そんな父親に目もくれず、キルケーはゴーレムに乗り街へとくり出す。
 自分の”遊び”の後始末に毎度父親が東奔西走しているのは知っている。が、だからどうだというのか?娘である自分に対してもへりくだる事しか出来ない父親などに気を使うつもりは全くなかった。

 「行こう、ゴーレム」

 キルケーの声に応え、ゴーレムは行く。
 この日、町に出た被害は家屋二軒倒壊。死者こそ出なかったが崩れた家の破片でケガを負った者二名。比較的軽い被害であった。

 





− キルケー −
物理戦闘力
魔法戦闘力
直感
知名度 10
精神力





「彼女は周囲の人間から疎まれている。仮に彼女がいなくなってもその人間達が彼女を捜そうとするかは疑問。ゆえに力ずくで拉致するのが最も手っ取り早いと思われる。
その場合ゴーレムとの交戦は必至。本来真っ向からゴーレムと戦闘をすれば、分身ならず本体であってもまず勝ち目はないが、ゴーレムに関しては多少なりと造詣があるため、彼女の魔法力の倍程度の魔法力があればゴーレムを無効化することは可能。残る身体能力、直感、持久力、カリスマは身体能力と直感をやや高めに、残る二つをやや低めに、と言ったところか。





*対象の上記の能力と状況を踏まえ、能力の割り振りを決定し下記アドレスの○の部分に打ち込んでください。*

http://www116.sakura.ne.jp/~jr/eventmcklk○○○○○.htm

左から、身体能力、魔法力、直感、持久力、カリスマになります。
例・能力の割り振りが身体能力6、魔法力3、直感5、持久力2、カリスマ4の場合
http://www116.sakura.ne.jp/~jr/eventmcklk63524.htmとなります。




□ 分身の能力 □

能力 身体能力・・・分身の身体的な要素、すなわち腕力の強さ、頑健さ、俊敏さ等を示します。

魔法力・・・・・・分身の持つ魔法力の総量です。この値が高いほど使える魔法が増えます。

直感・・・・・・・・・いわゆる第六感。危機察知能力、気配感知能力等の高さを示します。

持久力・・・・・・身体能力とは異なる分身の有効活動持続時間を示します。

カリスマ・・・・・この能力が高いと自分の行動に対し自然と他人の関心を惹く事が出来ます。

分身の能力の総量は、数値に変換するとおよそ20程度です。能力的にはあくまで最低限のものですので、常に20の値を全て使い切り、能力に割り振ってください。
*能力の下限は0・上限は20です*