中央大陸、ファルカス自治領。その領主の館の一室で、一人の男性が椅子に深く腰をかけ、うとうととまどろんでいる。 領主、カイル=ファルカスだ。彼の目の前の机には様々な書類が積み上げられている。 「・・・・・・ん」 と、カイルは人の気配を感じ、目を覚ました。眠りが浅かっただけに、なかなか頭が冴えない。 「・・・狐々夜、いるんだろう?」 部屋には、カイル以外には誰もいない。もとより、ここはカイルの、領主の私室である。その本人に断り無く入り込もうとする者などいはしない。ある一人を除いては。 「・・・起こしちゃいました?」 動物の耳が、ひょいと暖炉の裏から現れる。 「・・・・・・狐々夜」 カイルはふっと苦笑する。狐々夜の手には毛布が握られている。 「あの、いいお天気だし、お昼寝もいいと思うんですけど、風邪ひいちゃいますよ?ほら、春眠暁を覚えずって言いますよね」 そう言って、狐々夜はぱっと毛布を広げて見せた。 「まだ昼過ぎだし、ただの仮眠なんだからその例えは正しくないね。でも、ありがとう狐々夜」 カイルがそう言うと、狐々夜は口元に袖を当て、顔を赤くしてクスクスと笑う。 しかし、見れば見るほど奇異なる娘だ。 あきらかに異国の物と思える装束に、まるで動物のそれを思わせる耳と尻尾。だが、慣れているのかカイルはまるで頓着していないように見える。 と、そこにカイルの私室の扉をノックする音。カイルには、その叩きかたですぐに執事のシュターンだとわかる。 「なんだ?」 「失礼します」 老年の執事、シュターンが深く会釈し、扉を開く。 「・・・これは、狐々夜様もおられましたか」 シュターンの表情は硬い。それだけで、カイルと狐々夜には用件が知れた。 「お仕事・・・ですか?」 おそるおそる尋ねる狐々夜。 「・・・・・・はい。また、森に魔獣が出たらしく、すでに何人かの領民が被害にあったとの話が上がってきまして」 シュターンの言葉に、カイルと狐々夜の表情が険しくなる。 「・・・わかりました!今日中には、なんとかします」 が、重くなりそうな場の雰囲気を察してか、妙に朗らかな声で狐々夜はそう言う。 「・・・無理はしないようにね。言ってくれれば、君を助けてくれる人間だって大勢いるだろう。もちろん私もね」 「はい。でも、大丈夫ですよ。・・・・・・じゃ、行って来ます!」 狐々夜はそういうと、窓を開けて飛び出していく。カイルの私室は三階だというのに、彼女にとってそんなことは問題ではないらしい。 狐々夜が飛び出していくのを見届け、シュターンは深々とため息をついた。 「カイル様。何度も言うようですが、私兵なり傭兵なりを雇われては。こんな事が続けば、狐々夜様の身がいつ危うくなるやもしれません」 「・・・私だって、出来るならそうしたいさ。けど、狐々夜が承知しないだろう?それに、狐々夜が仕事を終えなければ、いつまでたっても式をあげられない」 「しかし、何ですな。まさか、カイル様が狐の娘と結婚する事になろうとは。あの頃はよもやそんな事になろうとは思いもしませんでした」 「不服かい?」 「いえ。私も狐々夜様の人となりを十分に知りました。今では、カイル様の身を固めてくださる事を感謝していますよ」 狐々夜は、森の木の枝を伝い、跳ねるように妖気を追っていた。その様は、まるで東方の島国が誇る”NINJA”を思わせる。 「・・・・・・いた!」 狐々夜の鼻が魔獣の臭いをかぎつける。 森の奥、ちょっとした岩場になった場所に、”それ”はいた。 毛に覆われ、ずんぐりとした風体は猿か、熊を彷彿とさせる。その口には、人の腕とおぼしき物がくわえられていた。 「・・・・・・あなた、街の人を取って喰ったのね」 鬼の前に立つ狐々夜。その立ち姿には迷いは感じられない。 その時になって、鬼はようやく狐々夜に気付いたようで、のそのそと首を廻した。 「金輪際、街にはこないと言うならば見逃してあげる。今すぐ、生まれた所へ帰りなさい」 鬼には、狐々夜は新しい獲物としてしか写らない。くわえていた腕を吐き捨てると、咆吼をあげて狐々夜に飛びかかった。 「そう、ならっ!」 狐々夜の両手に光が集まり、その光が”符”を形取る。 赤符『軍荼利明王』 狐々夜の手から放たれた符が螺旋を描くように飛び鬼の全身に張り付く。 そして、その直後符が赤く発光し、炸裂する。 全身の肉も骨も符にえぐり取られ、鬼は地面に倒れ伏す。 「自分に出来ることをやろう。そうすれば、皆幸せなんだから」 鬼の屍を見下ろし、ぽつりと狐々夜はつぶやいた。 |
− 狐々夜 − | |||||||||||
物理戦闘力 | 6 | ||||||||||
魔法戦闘力 | 8 | ||||||||||
直感 | 10 | ||||||||||
知名度 | 1 | ||||||||||
精神力 | 5 |
「彼女はもともと狐の変化。また彼女の現状を考えれば突然姿を消したところで周囲への影響は小さい。また、彼女に交渉を申し込んでもその材料が少ないため、効果は薄いと思われる。ゆえに、今回は力ずくで同行願うのがベターであろう。 そのためには、純粋に彼女の戦闘力を上回る必要がある。彼女に不意打ちは通用しないと思われるので、身体能力と魔法力を駆使した力押しが有効か。あとは持久力を多少・・・といったところか。 |
□ 分身の能力 □ |
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能力 | 身体能力・・・分身の身体的な要素、すなわち腕力の強さ、頑健さ、俊敏さ等を示します。 魔法力・・・・・・分身の持つ魔法力の総量です。この値が高いほど使える魔法が増えます。 直感・・・・・・・・・いわゆる第六感。危機察知能力、気配感知能力等の高さを示します。 持久力・・・・・・身体能力とは異なる分身の有効活動持続時間を示します。 カリスマ・・・・・この能力が高いと自分の行動に対し自然と他人の関心を惹く事が出来ます。 |
分身の能力の総量は、数値に変換するとおよそ20程度です。能力的にはあくまで最低限のものですので、常に20の値を全て使い切り、能力に割り振ってください。 |
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*能力の下限は0・上限は20です* |