二十五日目

全て世は事も無し、とは言うけれど本当に何もないと言うのはなかなかつまらない。
特に私はせっかちなのか、あまりのんびりと事を進めるのが好きじゃないところがあるからなおさらだ。
先日は「さぁ、改めて出発だ」と思った矢先、二階の玄室に捕らわれている冒険者を発見した。
今時こんな浅い階で、と思ったがその捕まっていた冒険者というのが先日私たちが助けたばかりのリムカだったのだから世の中というやつはわからない。
私たちはならず者を一掃し、リムカを救出するとそのままリムカを連れて街までとんぼ返りする事になった。二階とは言え、さすがに一人で帰って頂戴ねと言う訳にもいかない。
それだけで昨日は一日使ってしまった。どうにも私たちはいつもスタートでつまづく傾向があるように思える。

で、今日改めて出発。
しかし酒場で色々話を聞くに、世は事も無しなのは私たちだけではないらしく、現状割とどのパーティも行き詰まっている感があるみたい。
まぁ、こういうのは何かちょっとした事がきっかけでいきなり事態が動いたりするもんだし、まぁ気長に行くしかないんだろう。
ともかく、まずは失ったアイテムを集めていくのが目下私たちの目標になる。
例の転送装置に使うコインだとか、五階の地底湖を渡るための渡航券とか。
しかし一度終えたはずの課題を改めてこなすのは精神衛生上あまりよろしくない。

そんな道中、私たちが二階に下りた矢先、なんとかって人のパーティとすれちがった。
ぞろぞろと大人数だったから、救出行の帰りだったのだろう。大道芸人もかくや、と言うような妙な格好をした連中ばかりで、まともに挨拶していいものか迷う。
丁度その時先頭に立っていたリエッタも同じだったみたいで、結局すれ違う際に軽く挨拶する程度でそのまま何事もなく別れた。その後、黒曜が「なんとも珍妙な連中だったな」と零していた。

その後は、例によってハイウェイマンズギルドの連中の襲撃を受けた程度で、特にこれと言った事はなかった。
しかしまぁ、よくよく考えてみればこの迷宮で何かこれと言った事が起こる時って言うのは、大抵ろくでもない事ばかりだからこれでいいのかもしれない。

急がば回れ、とはよく言ったものだ。






戻る