十四日目

改めて私たちは龍神の迷宮に出発した。
神官の人は結局見つけたアイテムの類も一切奪われることなく救出されたので、例の転送装置に使うコインもそのまま、私たちは再び地下三階にやってきた。
ここ数日は私がヘマを踏んだのと、凶悪なトラップに立て続けにひっかかった事もあって停滞していたけど、さすがにそろそろ先へ進みたい。

とか何とか思っている先、タンが早速罠を見つけた。
下の階へ続く落とし穴だ。タンの責任ではないとは言え、前回トラップを見落としたのがまだ気になっているような気配がある。その感じは誰の目にも明らかだったみたいで、私が声をかけるより先に忍者の人がタンの肩をポンポンと軽く叩く。
忍者の人は忍者だって言う割りに言動がせっかちでちょっとおっちょこちょいなところがあるけど、たまにこういうさりげない気配りがさらっと出る辺りに好感がもてる。

で、また例によってならず者共に襲撃される。
さすがにそろそろこいつらに剣を向ける事に躊躇いが無くなってきた。
人を殺す事に躊躇いが無くなると言うのはあまりよろしい事だとは思わないけど、逆にやるべき時、やらなければならない時に躊躇いが出るのはもっとよろしくないんじゃないかと思う。
ま、人殺しを正当化していると言われればそれまでだけど、私は私の持論を曲げるつもりはない。
それにこっちとしては別に最初っから殺すつもりで剣を向けている訳じゃない。私たちはこいつらを撃退出来ればそれでいい訳で、結果的に死ぬか死なないかは相手の運次第だ。

皆前回の事が頭に残っているのは当然の事で、普段以上に力が入っているように見えた。
勿論私もそう。その結果、ならず者共の屍が累々と積み上がる事になった。

で、ならず者共を撃退した後、タンが何やら妙な品を見つけていた。
うさぎの耳・・・を模したヘッドバンド。タンが言うには、ただのがらくたではなく魔力を帯びた品で持ち主に幸運を呼ぶ効果があるとか。そう言えば兎の耳は幸運のお守りだって話を聞いた事があったっけ。

で・・・まぁ、何というか・・・。

皆がとりあえず一回身につけてみた訳。流れ的にね。
タンが付けると違和感がなさすぎて逆に困る。
まぁ私は元がいいから似合わない訳はない・・・と思いきや眼帯と合わせるとどうにも変な感じらしく、皆微妙な顔をしていた。失礼な話だ。
神官の人も違和感はない・・・と思いきやなんとなく夜の街で呼び込みをしている人みたいで思わず吹き出してしまった。耳まで真っ赤になっていた。
忍者の人は・・・もう、何て言うか・・・ミスマッチの妙とでも言うのか。黒装束に覆面。それに兎の耳という組み合わせはなんとも形容しがたい。まぁ、正直一番似合ってない。

結局、リーダーの神官の人が所持することになった。
当然常に頭につけてくれるのよね?と言ってみるとちょっと涙目になっていた。
ま、別に持っているだけで効果があるらしいんだけど、私としてはやっぱり実際に頭につけてて欲しい、なんて思ったりして。

ま、自分がつけろって言われたらごめんこうむるけど。






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