十日目

絢爛豪華な舞踏会。きらびやかに着飾った貴族、豪商といった上流階級の人間達が集まり、己の力を誇示するがごとく振る舞う。
ただ、普通の舞踏会とは雰囲気が違う。男達は皆不気味な白い仮面を身につけ、そして傍らには必ず女が一人が控えている。女達は皆一様に首輪をしていた。

その中に真っ白なドレスに身を包み、エメラルドの髪をなびかせた娘が一人。
あれは私だ。誰に言われるでもなく、そう理解した。

そして、その私は大勢の男達に陵辱されている。
何度も、何度も、何度も何度も何度も犯され、それはいつ終わるとも知れず続くように見えた。


中央に小さなステージ。
そのステージを囲むように、多少の観客席。観客席はまた仮面をつけた男達で埋められている。
ステージの中央に置かれているのは檻。獰猛な獣を閉じこめておくための檻。
そして、檻の中にはまた私がいた。
私は生気の無い目で辺りを見回すが、男達は暗い期待に目を輝かせるばかり。
やがて、檻の中に数匹の獣人が足を踏み入れる。
獣人の陰茎は全てはち切れるほどに勃起していた。

また、私は陵辱される。
子宮を突き破らんほどの激しい性行為。私はとっくに気が狂っていたように思えた。


中央に小さなステージ。
ステージを囲む観客席に、小さな檻。
檻の中にいるのは私だったようだけど、私はとても小さくなっていた。

両手足がなくなっているからだ。

檻の中に獣が放たれる。
獣人なんかではない。本物の、何日も餌を抜かれて餓えた肉食の獣。

獣は有無を言わさず身動きの取れぬ私に飛びかかり、爪と牙を振るう。
エメラルドの髪が羽のように舞う。真っ赤な血と、臓物が飛び散る。
その惨劇に限りなく近い悲劇の中で、私は嗤っているように見えた。


「・・・っ!?」

目を覚ました拍子に、私はしたたかに柱に頭を打ち付け、思わず呻いた。
パーティの皆が何事かと言う目で私を見ている。
神官の人が言うに、私はとんでもない悲鳴を上げて飛び起きたらしい。
獣人の子が不安そうに「大丈夫?」と聞いてくる。

全く・・・恐ろしい夢を見て、悲鳴を上げて目を覚ますなんて・・・。
これもきっと街で行方知れずになった女冒険者の話を耳にはさんだせいだ。
折角、心機一転改めて覚悟を決めて進もうって思った所なのに・・・。
ごめんなさい。気にしないで、と皆に声をかけて改めて毛布にくるまる。



私は毛布の中で夢の内容を思い出して、体中の毛穴が開くような感じに思わず身震いした。
けれど、そのぞっとするような感覚の中に死と絶望の暗い快楽を感じ、図らずも下腹が熱くなるのを感じていた・・・。






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