六日目

ホント、地下迷宮だと一体今が何日の何時なのかわからなくなる。
ここ数日、地下三階まで進んだ以外はこれと言って特筆する事はなかった。
例によってハイウェイマンズギルドの襲撃を受けたぐらいだけど、さすがにもう躊躇なんてしてられない。傭兵も、女の私たちに守られる事を恥ずかしいと思ったのか、ほとんどやけっぱちだったけど私たちの前に立って戦うようになった。逆にフォローするのが面倒になった事も少なくなかったけど、それは許そう。

あ、ひとつ面白い事があった。法則のゴースト、とか言う化け物の事だ。
化け物と言うより、この迷宮を守る守護霊みたいなものらしい。王位継承者の善性を図るのがその存在意義らしい。
で、その法則のゴーストが言うには「汝らは真に善なる者。ゆえにここを通る事を許可する」とかなんとか。
思わず吹き出してしまった。つまり、それは、私も法則のゴーストに「善」だと判定されたって事だ。私が善だってんなら、世の中の人間は皆善でしょうにね。

ま、それはいい。ゴーストが何を見て判定をくだしているのかもよくわからないんだし。

そうこうしているうちに、迷宮に潜って多分5日。さすがに食料も心許なくなってきたし、疲労も溜まってきたように感じる。お風呂にも入りたい。
で、タイミング良くって言ったら悪いんだけど、いつものハイウェイマンズギルドの襲撃で傭兵がポカをやらかして、ちょっと重めの怪我をした。
命に別状はないんだけど、さすがにこのまま先を目指すのはきついだろうって事で一度地上に戻る事になった。意義なんてあろうはずがない。

帰りは来た道を戻るだけ。変なトラップにひっかかるようなこともなく、無事に地上に帰って来れた。太陽がとんでもなくまぶしく感じる。

結局、これで傭兵はお役ご免となった。
さすがにああ言う風に怪我をしちゃうと仕方がない。
まぁ、正直なところこのまま一緒に行ってもお互いにとって益はないと思うし。
でも、ちょっと名残惜しいのは双方同じ。
だから少しだけお金にイロを付けて渡した。薬を買うぐらいなら十分だろう。
国に来たら是非遊びに来てくれ、とも言われた。近くに行く事があったら寄ってみてもいいかもしれない。

その後、先に酒場で別のメンバーを捜す事になった。お風呂に入りたかったけど、まぁ面倒な事は先に済ませておくに越した事はない。
それで酒場に行ったんだけど、獣人の子が友達でも見つけたみたいで、何やら色々話し込んでいた。もし尻尾があったらちぎれんばかりに振っていたんじゃないだろうか?
でも、相手の様子がちょっと変。前にちらっと酒場で見かけた時は、元気そうで前向きな雰囲気の子だと思ったんだけど、今は額に皺が寄ってる。
眼球にかすかに血管が浮いて見えるのはちゃんと寝ていないからだろうか。
イライラしているような、何かに怯えているような感じ。

結局、獣人の子はちょっと気落ちした感じで戻ってきた。あんまり表情が表に出ない子だと思ったけど、今は叱られた犬みたいになっててちょっと痛々しい。
街に戻ってきた時ぐらいは個人行動でいいかと思ったけど、後でちょっとおいしいご飯でも食べに誘ってみよう。

で、四人目は以外と簡単に見つかった。例によって獣人の子が声をかけて連れてきたんだけど、なんとかって国から来た神官らしい。年は私と同じくらいだろうか?
その年で聖職者ってだけあって、結構お堅い感じ。私としてはちょっと苦手なタイプだ。
女の私から見てもちょっとドキドキするぐらい綺麗で、ちょっとジェラシー。
上手くやっていければいいんだけど。






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